
ホームセンターや園芸店など様々な場所で見かけるアイビー。
育てやすさと豊富な種類が魅力で、園芸店などで可愛らしい葉のアイビーを見つけると、つい欲しくなってしまいます。
ただ、名前より見た目で選ぶことがほとんどだと思いますので、「こんな模様のアイビーが欲しいけれど名前がわからない」、「アイビーの見分けがつかない」、「育てているアイビーの名前がわからない。」といった悩みもあるのではないでしょうか。
そこで、この記事ではアイビーの種類や見分け方について紹介します。
とはいえ種類が非常に多いので、園芸店で良く見かけるアイビー、希少価値が高いアイビー、人気が高いアイビー、海外での評価が高いアイビーに絞って紹介します。
尚、探したい種類が見つけにくいこともありますので、分類方法については最初の項目でお伝えします。
1.アイビーの分類
アイビーの紹介に入る前に、ここで少しアイビーの分類について説明します。
というのも、いきなりアイビーの種類だけ見せられても種類が多すぎて途方に暮れるからです。そこで整理して読み進められるよう、まずは分類について説明しますので、ほんの少し我慢して読み進めてください。
アイビーは、学名でヘデラ(Hedera)、和名でキヅタと呼びます。
この記事の中でもアイビーと呼んだり、学名の方が都合が良いのでヘデラと呼んだりします。
名前がいくつもあってややこしいですが、ヘデラでもアイビーでもどちらでも構いません。
アイビー(へデラ)はいくつか種類が分類されていて、代表的な種ではカナリエンシス、へリックス、コルシカなどに分かれます。
園芸店、花屋、ホームセンターなどでよく見かけるアイビーはこの中の2段目のへデラ・へリックス。
英名をイングリッシュ・アイビーと呼びます。一般的にアイビーといえばこのヘデラ・へリックスを指すこともあります。
このヘデラ・へリックス(イングリッシュ・アイビー)は、へデラ属の中で最も品種改良、栽培がおこなわれていて、登録されている園芸品種だけでも500種に上ると言われています。
日本にも約100種ほど導入されており、葉の形や色などバリエーションに富んでいます。
この記事では、それぞれ種ごとに分けて紹介し、園芸品種の多いヘデラ・へリックスについては葉の形や色で探せるように記事をまとめています。
尚、名前の横に★印がある物は英国王立園芸協会が主催する優れた園芸品種に与えられる名誉ある”Award of Garden Merit”を得ている品種です。
それではさっそく見ていきましょう。
2.アイビーの種類
2-1.ヘデラ・カナリエンシス
①.ヘデラ・カナリエンシス(カナリー・アイビー)
国内のグランドカバーとして最も多い品種。
生命力が強く、どんな場所でも丈夫に育つため、道路分離帯や法面(のりめん)緑化、壁面緑化など様々な場所で使われている。名前は「カナリー諸島のアイビー」という意味で、オカメヅタとも呼ばれる。
②.ヘデラ・カナリエンシス‘バリエガタ’
カナリエンシスの斑入り品種。気温が零下のときは葉の縁が赤く染まる。
2-2.ヘデラ・へリックス(イングリッシュ・アイビー)
一般的にアイビーというと、ヘデラ・へリックスの園芸品種を指すことが多いです。
園芸店で一番見かけるのもこのへデラ・へリックス。
へデラ・へリックスについては園芸品種が多いため、見かけたときに名前を探しやすいよう、葉の模様で以下の4つに分類し、アルファベット順に掲載しています。
探したいアイビーの特徴に近い項目をクリックするとその記事までジャンプします。
2-2-1.葉が緑色の園芸品種
①へデラ・へリックス‘ダックフット’★ Duckfoot
水かきの付いたアヒルの足の形で小さくかわいい葉をつける。生長が早く、コンテナに寄せ植えをするとコンテナを占領してしまうぐらいよく増える。
②へデラ・へリックス‘グリミー’ Glymii
光沢のある緑の葉が特徴。「グリムさんのアイビー」と呼ばる。生長が早く吊り鉢や寄せ植えに向いている。
③ヘデラ・へリックス‘グリーンリップル’ Green Ripple
とがった葉と鮮やかなグリーンが特徴的。名称は「緑のさざ波」の意
④ヘデラ・へリックス‘ピッツバーグ’ Pittuburgh
アイビーの代名詞。へリックスの園芸品種の中では特に増産されている品種。寒さ暑さに強く、丈夫。国内の園芸店やホームセンターなど様々な場所で手に入る。
⑤ヘデラ・へリックス‘アイリッシュレイス’ Irish Lace
小鳥の足のような葉が特徴。緑のレースのような雰囲気から名づけられた。
⑥ヘデラ・へリックス‘シャムロック’ Shamrock
グリーンフェザーからの派生種で国内の市場にも多く出回っている。グリーンリップルよりは濃い緑色で。白い葉脈とのコントラストが美しい。
⑦ヘデラ・へリックス‘スイートハート’ Sweetheart
丸みを帯びたハート形の葉。とりわけ耐陰性が高く丈夫な性質。
2-2-2.葉が波状または奇葉型の園芸品
⑧ヘデラへリックス‘アパルーサ’ Apaloosa
ゆったりとカールした大葉が柔らかで豪華な雰囲気。マンダスクレステッドの変異種といわれている。
⑨ヘデラへリックス・‘カロリーナ・ハードクリンクル’ Carolina Crinkle
一つひとつの葉の切れ込みが深く幅がある。この切れ込んだ葉自体がさらに成長して、枝になり葉になるという非常に珍しい品種
⑩ヘデラ・へリックス‘イヴァレース’ Ivalace
小さな波状の葉が特徴的で、光沢のある暗緑色をしている。繁殖力旺盛で個性的な園芸品種。
⑪ヘデラ・へリックス‘マンダズ・クレステッド’★ Manda’s Crested
「マンダさんのカールの葉」という名前。発見者のマンダ氏にちなんで名づけられた。暗い緑の波状の葉が特徴で、性質は強健で寒さに強い。国内ではあまり見かけないがヨーロッパでは庭園や外構植栽などでよく用いられている。
⑫へデラ・へリックス‘メラニー’ Melanie
波状の葉の縁に白斑と紫のラインが入る美しいアイビー。冬場の色が最も美しい。パースリークレステッドの変異種でよく似ている。
⑬へデラ・へリックス‘パースリー・クレステッド’★ Parsley Crested
「パセリ状にチジれた」という意味で、葉の周囲がチジれる。冬になると紅葉し、葉の縁が赤く美しい色合いになる。
⑭へデラ・へリックス‘コンゲスタ ’★ Congesta
茎が上へ立ち上がる変わった園芸品種。生長が遅く、ほかのアイビーの6倍の時間がかかるため採算が取れず、滅多に市場には出てこない。葉も特徴的で面白いのでマニア向け。ちなみに1mの高さになるまでに5年ほどかかると言われている。
⑮へデラ・へリックス‘グリーンフェザー’ Green Feather
シャムロックの生みの親。クローバーに似た葉型を持っている。
⑯へデラ・へリックス‘スペチリー’★ Spetchly
世界一小さな葉をもつアイビー。生長が遅く、あまり市場に出回らない。
2-2-3.葉に白の模様が入った園芸品種
⑰へデラ・へリックス‘アダム’ Adam
枝が素直にまっすぐ伸びるため、上品な印象がある。鉢植え向きの園芸品種で、鉢植えや寄せ植えに向いている。あまりグランドカバーに使われることはない。
⑱へデラ・へリックス‘セシリア’★ Caecilia
初夏の新緑の白斑が最も美しい品種。アイビーの女王とも呼ばれる。インテリアプランツとして飾るのが一番良い。
⑲ヘデラ・へリックス‘エヴァ’ Eva
とがった葉に斑が入った園芸品種。可愛らしくて人気があるが、園芸店で売られているもののほとんどはオランダやデンマークからの輸入の枝を材料に挿し木したものが売られている。
⑳ヘデラ・へリックス‘グレイシャー’ ★ Glacier
白斑入りアイビーの代表格。公共工事、家庭菜園など様々な場所で見かける。リトルダイアモンドの生みの親で、グレイシャーは ‘氷河’の意味。
㉑ヘデラ・へリックス‘コリブリ’ Kolibri
黄色府斑や白斑が散ったように広がり、色彩の変化を楽しめる美しい園芸品種。何百鉢植えてみても一つとして同じ模様がないのが最大の特徴。欧米で最も人気の高い品種。
㉒ヘデラ・へリックス‘リトルダイアモンド’ Little Diamond
葉が小ぶりで細くひし形。トランプのダイヤのマークによく似ている。グレイシャーからの派生種で葉の周りを覆うように白斑が入る。
㉓へデラ・へリックス‘ルツィー’ Luzii
黄色斑入り吹き付けたような模様が印象的。
㉔へデラ・へリックス‘スターダスト’ Star Dust
白地の葉に緑の星粒をちりばめた美しい品種。アダムからの派生種。
2-2-4.葉が黄金色の園芸品種
㉕ヘデラ・へリックス’‘アングラリス・アウレア ’★ Angularis Aurea
新芽が黄金色になるアイビー。性質は基本種に比べると若干弱いか。
㉖へデラ・へリックス‘バターカップ’ Buttercup
黄金色が最も美しいアイビーとして知られている。ただ植え込んだ苗と土の相性が悪いときれいな色が出難くなることもある。
㉗ヘデラ・へリックス‘ゴールドチャイルド’★ Gold child
美しい黄金色が特徴のアイビー。黄色斑で一番よく見かける園芸品種。
㉘ヘデラ・へリックス‘ゴールドハート’ Gold Heart
葉の中心が黄金色になることから‘ゴールドハート’と呼ばれる。地面に植えると先祖還りして全部グリーンの葉にかわることも。鉢植えにし先祖還りした枝をこまめに切り捨てておくのが管理のポイント。
※先祖還り・・・変異する前の元の品種に戻る事
㉙へデラ・へリックス‘ゴールドスターン’ Goldstern
黄色斑の代表的なアイビーで、人気が高い。鳥の足のような葉型をしている。
㉚ヘデラ・へリックス‘ミダスタッチ’★ Midas Touch
ハート形の葉に黄金色の飛沫が飛んだような模様がインパクト大。最も豪華な金色の葉で、バターカップと並んで黄色斑のアイビーの王様と呼ばれる。触れるものを金に変えるミダス王の指がこのアイビーに触れたというのが名前の由来。茎が赤みがかっていて、葉とのコントラストも美しいアイビー。ゴールデンコリブリと呼ばれることもある。
㉛へデラ・へリックス ‘オロ・ディ・セレネス’ Oro di Bogliasco
濃い緑色に中央に入る黄金色の斑が入るアイビー。コントラストが鮮やかなアイビー。生命力が強く、生長が早い。
ここまでへデラ・へリックスについては国内で見かけることが少ない品種も含まれていましたが、代表格といっても差支えの無い品種に絞って紹介してきました。
ここからは、国内で見かけることが少なかったり、よほどの専門家でなければ扱うことがない種類に入ります。情報も少ないので有用とは言い難いですが、せっかくなので見てみるかぐらいの気持ちで読まれてください。
2-3.へデラ・コルシカ(ペルシアン・アイビー)
アジア、イラン、コーサカスに分布しているアイビーで、へリックスに比べると葉が大きく、丸みを帯びているのが特徴。葉の直径が10~15㎝程にもなる。
①へデラ・コルシカ Hedera colchica
英名:ペルシアン・アイビー
②ヘデラ・コルシカ‘デンタータ’ ★ H.colchica ‘Dentata ’
別名Elephant’s ears(象の耳)と呼ばれる大きな葉が特徴。時には葉の長さが25㎝になることも。常緑で生命力が強く、生長も早い。
③ヘデラ・コルシカ‘デンタータバリエガタ’ ★ H.colchica ‘Dentata variegata’
コルシカ・デンタータの斑入り種。デンタータより性質は若干弱い。
④ヘデラ・コルシカ‘サルファ―ハート’ ★ H.colchica ‘Sulphur heart’
ダークグリーンの中央に黄色と黄緑色の斑が散ったような模様。葉も大きく長さ20㎝ほど。
2-4.へデラネパレンシス H.nepalensis
アフガニスタン、ヒマラヤ、カシミール地方に分布している品種で、卵型~被針型で葉には深い切れ込みがある。
2-5.へデラ・パスチョフィー H.pastuchovii
ロシア原産で、ネパレンシスに似ているが、葉には切れ込みがない。生長が早く、耐乾性にも優れている。
6.へデラ・ロンベア H.rhombea
別名:ジャパニーズアイビー
日本原産のアイビーで、韓国、台湾などにも自生している。写真はフクリンキヅタH. r. ‘Variegata’
参考文献:園芸植物大辞典(小学館)
アイビージャパンhttp://www.mmjp.or.jp/ivyjapan
bambooweb.online.fr
3.まとめ
ここまでポピュラーな種類から、国内ではなかなか手に入らない種類まで40種のアイビーを紹介してきました。
この記事を読んで、興味深いアイビーが見つかったのであれば、今度は観葉植物アイビーの魅力を最大に引き出す楽しみ方と飾り方のコツを読んで、実際にアイビーを飾ってみてはいかがでしょうか。きっとこれまで以上にガーデニングや室内の装飾が楽しくなるはずです。
フェンスにからませるのに向いてるのは何ですか?
れい 様
メッセージあいがとうございます。
フェンスにアイビーをとお考えなのですね。
現場を実際に見ることができないので、適格なアドバイスとまでは行きませんが、れい様のご参考となれば幸いです。
まずは、そのフェンス付近の日当たりを観察されてみて下さい。
とても日当たりが良いのでしたら、「カナリエンシス(オカメヅタ)」や「へリックス」などの一般的に数多く出回っている品種であれば、どの品種でも問題は無いかと思います。ただ、葉に黄色や白の模様が入る「斑入り(バリエガタ)」系は夏場の非常に強い日光なので「葉焼け」を起こすことが良くありますので、可能であれば、「斑(ふ)」が入っていない、緑色が濃く、肉厚な葉を持つ品種を選択されると良いかと思います。
逆に、日当たりがとても悪く、あまり日光の当たらないところであればハート型の葉が特徴の「へリックス・スイートハート」という品種が良いでしょう。
ちなみに、こちらの「スイートハート」も園芸店などでは簡単に手に入る品種になります。
また、お住まいの地域が寒い地域でしたら「へリックス・ピッツバーグ」という品種が特に寒さにも強いと言われています。
最後になりますが、最初に挙げさせていただいた「カナリエンシス(オカメヅタ)」は若干和風なイメージになります。その辺りも視野に入れていただき、アイビー(ヘデラ)選びをされてみて下さい。
私どももれい様のフェンスが、美しいアイビーで埋め尽くされる日をとても楽しみにしております。