
ユニークなフォルムと独特の存在感を持ち、インテリアプランツとして人気があるコウモリラン。初めて目にした方は、いったいなんだこの植物は!?と驚かれる方も少なくないでしょう。その風貌は一見、不気味な形をしていますが、見ているうちに何とも可愛らしく、かっこいいと思えてしまう不思議な魅力をもっています。
最近ではその魅力にはまる人も増えてきて、植物雑誌やインテリア雑誌などでも頻繁に取り上げられ、壁掛け植物の代表格としても知られるようになりました。
ただ、その人気とは裏腹にコウモリランの生態や、正しい育て方、楽しみ方などはあまり知られていないようです。
そこで、ここではコウモリランの魅力を存分に楽しめるように、最高にかっこよい飾り方や楽しみ方、コウモリランの謎に包まれた生態や育て方を一挙に紹介していきます。
この記事を読めば、コウモリランを秘密を知ることができ、自由に飾って楽しむことができるようになります。
目次
関連記事:コウモリランの育て方『立派な株に育つコウモリランの育て方4つのポイントと株分け方法』
コウモリランの種類『コウモリラン種類~森の王冠、ジャングルの女王など原種全18種~ 』
1.圧巻!コウモリランの自生地での姿とその特徴
1-1.名前の由来と植物としての分類
“コウモリラン”という名前を聞くと「蘭」の仲間と思われがちですが、和名ビカクシダ(麋角羊歯)と呼ばれる「シダ」の仲間です。
ウラボシ科・ビカクシダ属に分類される植物で、他の木や岩石などにくっついて生活する“着生植物”です。
一般的にはコウモリランの名前で流通していますが、学名ではプラティケリウム“platycerium”といいます。
名前の由来は写真を見ると一目瞭然。鹿の角に似ている事からその名がつけられました。
1-2.コウモリランの自生地
コウモリランは図のようにアフリカやマダガスカル、東南アジア、太平洋諸島、オーストラリア、南アメリカの熱帯地域と世界に幅広く分布し、原種は18種存在しています。
コウモリランの自生地は、雨季と乾季がハッキリと分かれています。
雨季は雨が多く、気温が下がります(それでも熱帯なので日本よりはかなり暑い)。乾季は雨が何日も降らず、気温がかなり上昇する状態が交互にやってくるという環境です。そんな過酷な環境下で生き抜くために、コウモリランは独自の進化を遂げていきました。
1-3.圧巻!コウモリランの自生地での姿
進化を遂げた驚きの植物、コウモリランの自生地での姿がこちらです。
まさに圧巻ですね。
コウモリランの個性ともなっている一風変わった葉は「胞子葉」、「貯水葉」と呼ばれ、過酷な環境下で生きていくために、特殊な働きをするよう進化しました。
1-4.風変わりな貯水葉がもつ驚きの特徴
コウモリランの葉は「胞子葉」と、「貯水葉」の2種に分かれており、それぞれの葉にはとても大切な役割があります。
赤丸で囲った部分が「胞子葉」で、青丸で囲った部分が「貯水葉」です。
それぞれの役割ついて簡単に見ていきましょう。
1-4-1.胞子葉
「繁殖葉」とも呼ばれ、上の写真(左)のように葉の裏側には胞子を付け、シカの角に似た大きく成長します。
また品種にはよりますが、上の写真(右)のように、葉の表面がシルバーにも見える白い毛で覆われています。
この毛は「星状毛」と呼ばれ、原産地での強力な日光を反射し、葉を守る役目があると共に、水分の蒸散を防ぎ、害虫から葉を守る役目も果たしています。
1-4-2.貯水葉
「外套葉」、「栄養葉」、「泥除け葉」、「落ち葉止め葉」など色々な呼び方があり、こちらの葉も星状毛が存在します。
株元に新しい葉が出るたびに、自身を覆って成長します。
また貯水葉は上の写真(左)のように、枯れて茶色に変わっていきますが、水分や養分を蓄えるスポンジのような役割を果たします。枯れたからといって取り除かないよう注意しましょう。他に自身を木に着生させる支えになる大切な役割も果たします。
更に、多くの種類は貯水葉の上部が手の平を上に広げたように広がります。これは上から落ちてくる落ち葉や虫の死がい、鳥の糞などをかき集めることに役立っています。それらは細菌により分解され、株の養分として吸収できる仕組みになっています。
驚くことに、なんと自らの枯れた貯水葉も、細菌により分解され、自身の養分に変えてしまうという特徴を持っています。
このように、貯水葉は過酷な環境下で生きぬくために、独自の進化してきたコウモリランだけが持つ、特殊な葉の形態ともいえます。
2.独特なフォルムを活かした最高にかっこいい3つの飾り方
コウモリランの特徴に触れてみると、なかなか興味深いものがあったのではないでしょうか。
ここからは、コウモリランの独特なフォルムを活かした、最高にかっこいい飾り方を紹介していきます。
コウモリランはその独創的なフォルムで、インテリア性・デザイン性に最も富んでいる観葉植物と言っても過言ではありません。
その個性を生かした、最高にかっこいい飾り方は以下の3つ。
①ジャングルの迫力を感じるハンギング
②存在感を活かした置き鉢のテクニック
③感覚が刺激される壁掛けのテクニック
それぞれ見ていきましょう。
2-1.ジャングルの迫力を感じるハンギング
ハンギングとは壁や天井から吊り下げる飾り方のことです。「観葉植物の置き場所が無くて…」と言う方にぴったりの飾り方です。
また置き鉢とは違い、コウモリランを見上げる飾り方になるので、大きな木を見上げた時の感覚のように、壮大な気分にさせてくれることが何よりの魅力です。
このように植物を天井や壁から吊るすと、部屋が一気に洗練された雰囲気に包まれます。
観葉植物の配置にお困りの方も「ハンギング」はおすすめの飾り方といえるでしょう。
ハンギングをするときは、壁や天井に打ち込む‘ピン’や‘釘’が耐えられる重量を必ず確認しておいてください。
コウモリランは水を吸った状態だと、約3倍ほどの重量になりますので、それも計算に入れておかれるとよいでしょう。
ピンや釘はホームセンターなどで容易に手に入ります。
2-2.存在感を活かした置き鉢のテクニック
一般的な観葉植物同様の王道の飾り方。
コウモリランはもともと独特なフォルムをしていますので、卓上や床置き・個性的なデザインの鉢に植えるだけで、他の観葉植物では出せない独特の存在感を醸し出してくれます。
また、板についたコウモリランをフォトスタンドのようにして飾ることもお勧めです。生きた卓上インテリアなんてとてもおしゃれですね。
上写真は本を加工し鉢にしたものです。オリジナリティー溢れる鉢に仕上がっています。コウモリランとの相性も良く、センスが光りますね。コウモリランの特性と育て方を知っていれば、このようにとセンスを活かし、オルジナルの鉢を作ったり、おしゃれな小物を鉢にしてコウモリランを楽しむことが可能になります。ぜひ挑戦してみてください。
2-3.感覚が刺激される壁掛けのテクニック
コウモリランの最も代表的な飾り方とも言える壁掛け。
置き場所も選ばず色々な所へ飾れる、まるで絵画のような芸術性を持つコウモリラン。
圧倒的な存在感があるため、一つあるだけでも部屋の雰囲気はガラッと変わります。
上の写真はコウモリランの愛好家の部屋。手入れに慣れない間はこれだけの数を管理することは難しいと思いますが、慣れてくればこのような複数の壁掛けコウモリランを飾ることで、一気に緑溢れる癒しのリラックス空間を作ることができます。
若干不気味ではありますが…
コウモリランを着生させる板にもこだわってみると、更に可愛らしいインテリアアイテムに変身します。個性溢れるお部屋づくりにとても活躍してくれることでしょう。
ここまでは飾り方について紹介してきましたが、いかがでしたか?
小物づくりに挑戦したくなった方もいるのではないでしょうか。
そんな方のために、続いて壁掛けコウモリランの作り方を紹介していきます。
3.生きたオブジェ!コウモリランの壁掛けオブジェの作り方
お洒落な壁掛けアイテム。板に着生させたコウモリランを作る方法を紹介します。
分かりやすいようにそれぞれの手順に写真を添えて紹介します。それほど難しくはありませんので、ぜひトライしてみてください。
作る季節は春~秋頃に行います。
準備するものは以下の通り。
1. 植物(コウモリラン)
2.水苔
3.木片
4.麻ひも
5.釘(麻ひもを固定するもの)
6.フック
7.壁用の釘
ここまで揃えたら早速トライ!
① まず壁に掛ける用のフックを木片に取り付けます。
② 植物の配置箇所を決めます。
より正確に取り付ける為、植物と同サイズの器や型紙などを使い、印を入れていきます。
③ 印を入れた部分に木用の釘を円形に取り付けます。
これはコウモリランのズレ防止の為に取り付ける、ひもと釘とを結びつける為のものです。
④ コウモリランの根をほぐし着生をしやすくします。
ここであまりほぐし過ぎるとコウモリラン自体が傷むので要注意。ポイントは黒く変色した古い根だけを落とす事を意識してください。
⑤ 次に植物を木片に取り付けていきます。
ここで、植物の今後の成長を考えながら上下の向きを決めます。
⑥ 水ゴケをまいていきます。
水苔は水で湿らせ、軽く絞ったものを使用します。先に木片に水苔を敷き、その後、写真のように植物を置き、再び水苔で巻いていきます。ここでのポイントは水苔をたっぷり使うことです。
⑦ 次は植物を麻ひもで固定していきます。
③で取り付けた釘に縛りますが、あまりきつく縛ると植物が傷みます。強すぎず、弱すぎず、板を立てた時にコウモリランが取れなければ良いです。
最後にお気に入りの場所に掛けて完成です。板に穴を空けワイヤーを通し、吊り下げられるようにしても良いでしょう。
これでオリジナルの壁掛けアイテムを自由に作ることができます。第2項のかっこいい飾り方を参考に、ぜひ自分だけのおしゃれな空間を作ってみてください。
4.コウモリランを生き生き育てる3つのポイント
ここまでコウモリランの飾り方や作り方を紹介していきました。実際に育ててみたくなった方もいるかもしれませんね。
でもうまく育てられるか自信がない方も多いと思いますので、コウモリランを元気に育てる方法を以下の3つに絞って紹介します。
① 一目でわかるコウモリランの日当たり条件
② 水やりで失敗しないための3つのテクニック
③ 温度管理で守ってほしい、たった一つの条件
この3つのポイントを押さえておくと、コウモリランはイキイキと元気な状態で育てることができます。
まず頭に置きたいのは、「1-2.コウモリランの自生地」で紹介した自生地での特徴です。管理する環境をコウモリランの自生地の環境に近づけてあげることをイメージするのがコツです。
それぞれ解説していきます。
4-1.一目でわかるコウモリランの日当たり条件
まずはコウモリランを育てるにあたり最も気がかりなのが置き場所ではないでしょうか。
「どの部屋なら元気に育つのだろうか」、「置きたい部屋は日光が当たらないけど大丈夫かな」とお悩みの方もいるでしょう。
そこで置き場所の基準がわかりやすいように、下の写真を元に解説していきます。
コウモリランの置き場所として最適な場所は①、②です。
シダの仲間ということで、日陰をイメージする方も多いと思いますが、コウモリランは疎林にしか分布しないと言われているので、①・②のような明るい環境が最適です。日に当てることで強くガッチリした株になります。
④のような暗めの日陰でもしばらくは生育可能ですが、長期間このような暗い場所に置いておくと、次第に元気が無くなり貧弱な株になってしまいます。
また、冬以外は屋外でも育成は可能です。春・秋は軒下などに出して、日光浴をさせてください。
夏になると日差しが強すぎる為、直射日光を避けて、明るい日陰などに置いてください。
室内で生育していたコウモリランを屋外に出すときには以下の2つのポイントに注意してください。
・室内から屋外に出す場合はいきなり太陽光に当てず、③→②→①→屋外というように1~2週間程かけて徐々に日光に慣れさせること。
・夏場の直射日光は“葉やけ”の原因になるので避けること。
また園芸店などで遮光ネットを購入し、強すぎる日差しを遮ることも一つの手です。
4-2.水やりで失敗しないための3つのテクニック
コウモリランを枯らしてしまう一番の原因とされているのが「水やり」です。
コウモリランは2~3日水やりを忘れたぐらいで枯れることはまずありません。しかし水を与えすぎることも良くありません。
一見難しいようですが深く考えず、以下の3点をしっかりと頭に入れて水やりを行いましょう。
① 水ゴケや土壌が乾いたら水を与える。
② 水ゴケや土壌が乾くまで水を与えない。(乾くと鉢や株がとても軽くなる)
③ 貯水葉の中にまでしっかり水が行きわたるようにする。
このポイントを押さえておけば、水やりでコウモリランを枯らす心配はありませんので、ぜひ覚えておいてください。
またコウモリランは “鉢植えタイプ”・“活着タイプ”・“ハンギングタイプ”のいずれかのタイプになっています。
それぞれのタイプ別に水やりのポイントを見てみましょう。
4-2-1.鉢植えタイプ
まずは鉢に植えられているタイプ。ここでのポイントは3つ。
① 土壌の乾き具合を手で触ってみて確認する。
② 鉢を深めの受け皿やバケツなどに入れ、そこへ水を貯め、鉢の下から吸わせる。
③ 受け皿などに水を貯めておくと、数分後には全て吸い上げてしまうことがある。その時はまた水を足してやり、吸い上げなくなるまでしっかりと水を与え、受け皿に残った水は捨てる。
貯水葉が覆いかぶさり、表土が見えず土に水をかけられないことがあるため、このような水やりを行います。
4-2-2.活着タイプ
木の板などに着生されているタイプ。主に水ゴケが貯水葉の中に入っています。
水やりのポイントは以下の3つです。
① バケツやボールのような深めの入れ物や、洗面器などに水を張り、板ごと付ける。
② 水ゴケは水が染み込むまでに少し時間を要するので10分程度つけておく。
③ 鉢植えに比べ乾きが早いので水切れに注意すること。
①は下の写真のような要領で。
4-2-3.ハンギングタイプ
吊り下げタイプで鉢や板がついておらず、コウモリランがグルリと水苔を覆っています。こちらも水やりのポイントは3つ。
① バケツやボールのような深めの入れ物や、洗面器などに水を張り、ざぶっとつける。
② 水ゴケや根にしっかりと水がしみるように、10分程度つけておく。
③ 活着タイプ同様に乾きが早いため、水切れに注意する。
以上が水やりの方法です。ここで紹介したポイントを押さえておけば、水やりで枯らすことはなくなるでしょう。
4-3.温度管理で守ってほしい、たった一つの条件
最後はコウモリランの温度管理についてです。こちらのポイントはたった1つだけ。
①10℃以上の温度を保つこと。
コウモリランは熱帯植物だけあって寒さに弱いです。10℃を保てる環境が望ましく、最低でも5℃以上の環境を保ってあげると良いでしょう。(品種によっては最低10℃必要な種もあります。)
※ 個体差もありますが、九州地方などでは年中屋外で管理されているビフルカツムをたまに見かけます。
断水などで乾燥状態にした場合は、氷点下にならない限り冬越しは出来ます。しかし安全のため、冬場は暖かい部屋、リビングルームなどに置くことをお勧めします。
尚、 暑さに関しては何℃以上あるとダメということはありません。高温を好みますので、暑い時期は風通しの良い場所で管理してあげると良いでしょう。
更に詳しく育て方を知りたい方は『立派な株に育つコウモリランの育て方4つのポイントと株分け方法』を参考にすると、立派な株を育てる方法が身に付きます。育て方に慣れてきた方はぜひ参考にしてみてください。
5.まとめ
いかがでしたか?とても個性的な風貌をしているコウモリラン。初めてみた時は「何だこれは…」と、敬遠しがちです。しかし不思議と一度見たら忘れられないその姿、その魅力にドンドン引き込まれてしまうことでしょう。
これを機会に、ぜひ一度コウモリランを育ててみてはいかがでしょうか。
この記事を読んでコウモリランのファンが1人でも増えることを心待ちにしています。
また皆様の生活とグリーンがもっと身近なものになれば大変うれしく思います。
コメントはこちらからどうぞ