
クリスマスの時期になるときらびやかなクリスマスツリーが街を彩り始め、その壮麗な姿にふと目を奪われてしまうこともありますよね。
そんなクリスマスツリーに使われている“木”は意外に知られていないものです。
クリスマスツリーの木にはさまざまな種類があり、飾る場所や、飾り方によって最適な種類が異なります。
しかし、名前や特性が分かりにくく、家やお店で飾るときにどんな種類の木を選んだらいいか迷ってしまうこともあるのではないでしょうか?
ここでは、目的や用途に合わせた最適なクリスマスツリーの木の選び方を教えます。
この記事を読んで思い出に残る最高のクリスマスツリーを作ってください。
1.クリスマスツリーに使われる木の由来
クリスマスをもっと味わい深い思い出にするために、まずはクリスマスツリーが飾られるようになった由来を紹介します。
クリスマスにツリーが飾られるようになったのは、日本では1860年が最初だといわれています。
もともとクリスマスツリーは、クリスマスのために飾り付けられた木のことで、常緑の針葉樹が使われるのは、冬の間も緑を保つため、強い生命力の象徴とされたためだそうです。
またアダムとイブの物語に出てくる「知恵の樹」として、冬に葉が落ちてしまうリンゴの木の代わりに、常緑樹のモミの木が使用されたのが由来と言われています。
日本では日本原産のウラジロモミ、ホンモミ、ドイツトウヒが使われることが多く、ヨーロッパではヨーロッパモミを主流にコーカサスモミなどが有名です。
プラスチック製のイミテーション(人工樹木)もあり、様々な販売店が取り扱うようになりました。
日本にクリスマスツリーが登場して一世紀半。今や日本の年中行事となって日本中の人たちがその一大イベントを毎年心待ちにするようになりました。
2.クリスマスツリーに最もお勧めな木7選(国内編)
ここでは日本国内で手に入るおすすめのクリスマスツリーの木を紹介します。
園芸店などでよく目にする品種から、珍しいものまでありますので、ぜひ参考にしてください。
2-1.ウラジロモミ(Abies homolepis)
日本原産のウラジロモミは葉の裏側が銀白色になり、全体がグレーがかって見えるのが特徴です。
室内で葉を落としにくく、価格も手ごろで、園芸店や、インターネット販売などで手に入ります。
また、枝が丈夫なため、いろんな装飾ができて、クリスマスツリーとしては最も適しているといえるでしょう。
このウラジロモミは標高1000m級の山に自生しており、高さは30mまで成長します。
北方や高山で育ったものほど枝が詰まって樹形が美しくなります。
2-2.ドイツトウヒ(picea abies)
国内では最もクリスマスツリーとして使われることが多く、ウラジロモミに比べ成長が早いため、価格も手頃なのが特徴です。
ウラジロモミに比べると枝が細く、葉の色が濃いため、アンティークな印象です。
三角錐の樹形に育ち、ボリュームもあります。
枝はウラジロモミに比べると若干弱く、あっさりした飾り付けが適しているといえます。
2-3.モミ(Abies firma)
日本原産の樹種で、クリスマスツリーにはモミと言われる有名な樹種。
ウラジロモミと区別するため‘ホンモミ’とも呼ばれます。
ボリュームがあり、ウラジロモミに比べ、葉が濃い緑色で大きく堅いのが特徴です。
ドイツトウヒやウラジロモミに比べると、樹形が三角錐になりにくく、室内では葉を落としやすいので、流通量は前者には及びませんが、本格的なモミを楽しみたい方はこちらをどうぞ。
こちらはウラジロモミとホンモミのビッグツインツリーです。
右がホンモミ、左がウラジロモミです。
ウラジロモミの方は若干グレーがかり、ホンモミは濃い緑色をしています。
また、ウラジロは三角錐に近い形状ですが、ホンモミは枝が暴れています。
優等生のウラジロモミに対して、野性的なホンモミといった感じで迫力があります。
2-4.シラビソ(Abies veitchii)
日本原産の針葉樹で、別名シラベ
ウラジロモミよりさらに高い標高1500mの亜高山地帯に分布しています。
樹形が美しいためクリスマスツリーにも使用されますが、あまり知られていません。
ウラジロモミに比べ、枝が散在しているのですが、幅があるため、ビッグツリーになると迫力があります。
2-5.ゴールドクレスト( Cupressus macrocarpa ‘Goldcrest’)
柱状形の樹形で葉は最良の黄金色になります。
また、刈り込んでトピアリー仕上げになっているものも流通しており、様々な樹形を楽しむこともできます。
ゴールドクレストやウィルマは枝が細く柔らかいため、豪華な飾り付けには適しません。
飾り付けしにくいゴールドクレストやウィルマをクリスマス風にアレンジしようとするならば、寄せ植えやあっさりした飾り付けを施すのが一番です。

ゴールドクレストのクリスマスアレンジのアイデア。
クリスマスの花として代表的な“ポインセチア”や“ガーデンシクラメン”などを寄せ植えにすると、可愛らしいクリスマスアレンジができます。
2-6.オレゴンモミ、ノーブルモミ(Abies procera)
ウラジロモミやドイツトウヒに比べ葉が柔らかく、枝が密集していてボリュームもあります。
とても魅力的な種類ですので、見つけたらぜひ手に入れたいところ。
2-7.ピセア・プンゲンス(Picea Pungens)
クリスマスとして使われる木のなかでは最も美しい品種。
銀青色の葉は日光を反射させ、その光り輝く姿は思わず見とれてしまうほどの美しさです。
葉が銀青色に見えるのは、新しい葉が‘ろう’で覆われているためで、直射日光を反射し日焼けを防ぐ効果があります。
夏場が最も美しく、新芽が白く光り輝きます。
成長が非常に遅く、驚くほど高価なため、一般に街中で見かけるのは稀。
お庭のシンボルツリーとして植え込んで、クリスマス時期に装飾をするのが一番賢い使い方でしょう。
有名なのは‘ホプシー’、‘モンゴメリー’です。
3.クリスマスで最も人気のある木4選(海外編)
ここではあまりお目にかからない海外で使われるクリスマスツリーの木を紹介します。
3-1.コーカサスモミ(abies nordmanniana)
ヨーロッパでもっともクリスマスツリーに適した品種として使われています。
よく知られるコーカサス地方原産の樹種。庭園などでよく使われます。
3-2.欧州トウヒ(picea abies ‘Wil’s Zwerg’)
ドイツ原産のトウヒで、名前の意味は「ドワーフの意思」
生長が遅く、密生した樹冠で円錐形になる魅力的な樹種。
非常に頑強で、存在感があり、偉大なドワーフの意思を受け継いだ赤いトウヒという意味があります。
3-3.ヨーロッパモミ(abies alba)
中央~南ヨーロッパにかけて生産されているモミ。
30m~50mまで成長するモミです。
非常に大きく生長するため、ビッグサイズのクリスマスツリーにはこのヨーロッパモミが使われているようです。
3-4.コロラドモミ(Abies concolor ‘Glauca’)
銀白色の葉が美しいモミ。
あまり大きくならないため、家庭用のクリスマスツリーとして親しまれています。
4.イミテーションツリー編
生木はクリスマス時期が過ぎた後の対処に頭が痛いところ。
「時期が過ぎたら仕舞い込んで、また来年使いたい」という方にはイミテーションのツリーがおすすめです。
一般的なイミテーションツリーは、量販店、専門店、インターネット販売などで手に入ります。
グレードが様々で、金額次第でクオリティの高いものが手に入ります。
イミテーションツリーにはワイドタイプとスリムタイプがあります。
広い場所に飾るときは迫力のあるワイドタイプ。狭い場所をセンス良く飾りたいときはスリムタイプを選ぶとよいでしょう。
また、ホワイトツリーなどもあります。
好みによって使い分けるといいですね。
また、最近では本物の木に近づけたリアルなタイプも登場しています。
金額も高価ですが、クオリティが高く丈夫で長持ちしますので、長く楽しみたいときにはリアルタイプを選んでみるのもいいでしょう。
イミテーションツリーの飾りつけを詳しく知りたい方ため息が出るほど美しいクリスマスツリーと最高にお洒落な飾り方を参考にしてください。飾り方のテクニックなどを詳しく解説しています。
5.人工樹と生木の違いと選び方のポイント
イミテーションのツリーは枝が強固な金属で作られているため豪華な飾りつけがしやすいのが特徴で、これでもか!ってぐらい飾り付けできます。
イミテーションのツリーに比べると、生木は枝が柔らかいため、オーナメントや、電飾をつけすぎると、枝が下がってしまい、かえって見苦しくなってしまいます。
しかし生木にはイミテーションにはない存在感や、自然な樹形の素朴さがあり、心に響くクリスマスを演出してくれます。
もともと、そのままでもかっこいいものですから、オーナメントだけ飾るか、電飾だけ飾るようにすると、シンプルで素材の良さを引き出すことができます。
オーナメントと電飾の両方飾りたいときは、それぞれのボリュームを抑えて、枝ぶりがよく見えるように飾りましょう。
心に残るクリスマスツリーはいつもシンプル。
6.置き場所別おすすめの生木ランキング
一度生木に話を戻しましょう。
国内で手に入る生木のおすすめ度を「葉の落ちにくさ、手に入りやすさ、価格、ボリューム、飾り付けしやすさ」の項目で5点満点で評価し、飾る場所によってどのツリーが最適なのかを教えます。
6-1.屋内編
屋内でのおすすめランキングは以下の通りです。
1位:ウラジロモミ
(葉の落ちにくさ5、手に入りやすさ5、価格4、ボリューム4、飾りやすさ4)
2位:ドイツトウヒ
(葉の落ちにくさ4、手に入りやすさ5、価格4、ボリューム5、飾りやすさ3)
3位:コニファー
(葉の落ちにくさ5、手に入りやすさ5、価格5、ボリューム2、飾りやすさ1)
次点でオレゴンモミ
(葉の落ちにくさ5、手に入りやすさ2、価格3、ボリューム5、飾りやすさ5)
その他の生木の得点は以下の通り。
・ホンモミ
(葉の落ちにくさ3、手に入りやすさ4、価格4、ボリューム5、飾りやすさ4)
・シラビソ
(葉の落ちにくさ3、手に入りやすさ2、価格4、ボリューム4、飾りやすさ3)
・プンゲンス
(葉の落ちにくさ2、手に入りやすさ2、価格-10、ボリューム2、飾りやすさ2、美しさ8)
屋内では“葉の落ちにくさ”を最重要項目としてとらえてください。
なぜなら“葉の落ちにくさ”は高山植物の室内における耐性を示したものだからです。
仮に11月の上旬に飾って12/25までの約2か月間、室内で耐えられるかの目安になります。
点数が低い木ほど、室内に飾る期間を短くしてください。
週に2~3回屋外に出したり、毎日霧吹きをして葉水を与えると落葉を遅らせることもできます。
6-1-1.生木を屋内に飾るときの3つの注意点
どの木も高山地帯の寒い場所に育っている木ですので、暑さ、乾燥、暗さが苦手です。
生木をクリスマスまで美しく飾るためにも3つの注意点を押さえておいてください。
①できる限り日光の当たる明るい場所に置くこと。日光が当たらない場合は室内の光でもいいので、できるだけ明るい場所に置きましょう。
②毎日霧吹きで葉水を与えること。空気の乾燥による落葉を最低限に抑えることができます。
またエアコンが当たる場所に置かない。いっぺんに落葉します。絶対に置かないように。
③根の土が乾いてから水やりをすること。水が溜まった状態が続くと根腐れをおこして、あっという間に枯れます。
6-2.屋外編
暗い場所でなければどの木も“葉の落ちにくさ”は変わりませんので、ボリュームがあるものを選ぶとよいでしょう。
ランキングは次の通りです。
1位:ドイツトウヒ
2位:ウラジロモミ
3位:ホンモミ
オレゴンモミが手に入るのであれば1位にしてもいいですね。
7.生木を選ぶ時の3つのポイント
生木は自然な姿で育ったものが多く、なかなか理想の形には出会えないもの。
でもせっかく購入するなら素敵な樹形の方がいいですよね。
そこで上手な選び方のポイント3つをここで紹介します。
7-1.枝の密度で選ぶ
枝が密集していればいるほど、飾り付けが容易になります。
左に比べると右のウラジロモミは枝が良く密集していてボリュームがあります。
高山地帯で育ったモミほど枝が密集して美しい樹形になります。できれば枝が密集した商品を探したいところ。
7-2.樹形で選ぶ
できれば三角錐に近い樹形を探したいところ。
左のウラジロモミに比べると右のウラジロモミの方が三角錐に近い樹形です。
でも自然に育ったものにクリスマスツリーっぽい形になれ!とはいえません。
枝が自由奔放に伸びた樹形も、味わいがあって素敵です。
7-3.枝の強度で選ぶ
枝が丈夫であるほど飾りを多くつけられるのですが、こればっかりは実物を触って決めないといけません。
実際に園芸店や専門店に足を運んで、ご自身の目で確かめるのが一番です。
どうしても思うような樹形に出会えないとき、がっかりすることもあるかもしれません。
そんな時は、思い出してください。
どんな樹形の木でも同じものは二つとない、ただ一つの木です。
そう思うとどれもが最高に素敵で愛着がわいてくるような気がしませんか。
8.屋外に飾るときに必ず知っておくべきサイズ別の注意点
屋外にクリスマスツリーを飾るとき、強風による転倒での事故を未然に防ぐため、必ず知っておきたい注意点をサイズ別に教えます。
①高さ1.5mまで
サイズが1.0~1.5mぐらいが一番扱いやすいサイズです。
直径45㎝程度の素焼き鉢や陶器鉢などに植えこんでおくとよいでしょう。倒れても大きな事故にはつながりません。
②高さ2.0m
直径50㎝程度の重量のある鉢に植えこみましょう。
③高さ2.4m~3.0m
根が入っているプランターのサイズを直径60㎝以上のものを使いましょう。
風が強い場所だと、直径80cm程度のプランターに植え込むといいでしょう。
⑤高さ3.6m~4.0m
ここからはプロの領域です。
この高さになるとプランターを大きくしても、根元から倒れることがあるため、四方からワイヤーを張る必要があります。
詳しい技術を持った専門家に依頼しましょう。
⑥高さ4.5m~5.0m
このサイズになると重機を使用して移動、立ち上げを行います。
風当りなど場所によりますが、木を支えるための土台を鉄骨などで作る必要があります。
その土台にワイヤーを張り固定します。
⑦5.0m以上
5.0mを超えると、重量も1tを軽く超えるようになるため、床の耐荷重(床が耐えられる重量の限界)を調査し、土台を広くして加重を分散する必要がでてきます。
土台は鉄骨で作成し、その鉄骨と根鉢をベルトで固定したあと、さらにワイヤーを張ります。
飾り付けの作業はすべて高所作業車で行います。
大きなツリーは建築物と変わりないため、事前に構造計算を行います。
このように徹底した安全管理を行い、万が一にも事故が起こらないように、私たちプロは気を張って作業をしていきます。
街中で見かける大きなツリーはこのような様々な技術を駆使して作られています。
9. クリスマスツリーのレンタルサービス
ここまで木の選び方について触れてきましたが、実際に1から自分で木を選んで設置まで行うのは大変です。
そんな時はレンタルを利用して、プロに設置から装飾まで一括で依頼してみましょう。
特に商業施設等のクリスマスツリーは冬の一大スポットとして大きく注目されるので、多くの設置実績を持つレンタル会社に依頼するのがベストです。
このブログを運営する井上熱帯園も、毎年多くのクリスマスツリーを全国で設置させていただいています。
詳しくは以下を御覧ください。
10.まとめ
いかがでしたでしょうか。
ここまで最高のクリスマスを演出するクリスマスの木の選び方を紹介してきました。
クリスマスツリーの由来や、クリスマスの木について知識が深まると、クリスマスをより味わい深く過ごすことができそうな気がします。
クリスマスはただ美しいツリーを飾って観ることだけではなく、そのクリスマスツリーが背景となって、人生の宝物となる思い出が作られるような特別な時期だと思います。
嬉しいことも、悲しいことも、楽しいことも、切ないこともすべてが人生の贈り物。
そんな一瞬一瞬を味わい、記憶に残る最高のクリスマスをお過ごしください。
去年ドイツトウヒにするかウラジロモミの木にするか迷って、結局ドイツトウヒにしました。
色々ネットで調べてたら育てやすいとの事でした。
耐陰性も有り夏場の耐暑性にもやや強く、浅根性で移植もし易いとの事でしたのでドイツトウヒを購入しました。
LEDイルミネーションで飾れば本格的なクリスマスツリーを楽しめます。
是非ともやってみて下さい。
ただドイツトウヒは成長が早いらしいです。
コメントありがとうございます。
ドイツトウヒ、ウラジロモミ、どちらも室内耐性があり、価格も手ごろで手に入りやすいのがいいですね。
ただ、庭植えすると夏場の暑さで傷んでしまいますのでご注意を。